泌尿器科
概要・診療について
概要
泌尿器科では、尿路性器悪性腫瘍(腎がん、膀胱がん、腎盂尿管がん、前立腺がん、精巣がんなど)、排尿障害(前立腺肥大症、過活動膀胱、頻尿症、夜間頻尿症、神経因性膀胱、尿失禁など)、尿路感染症(膀胱炎、腎盂腎炎、前立腺炎、尿道炎など)、尿路結石症、男性更年期障害(LOH症候群)などの泌尿器疾患全般を対象に診療を行っています。男性だけでなく女性にも対応しており、女性の患者さんの割合は3割ほどです。常勤医師1人(日本泌尿器科学会泌尿器科専門医)と、非常勤医師2人の体制で、月曜日から金曜日まで毎日、外来診療を行っています。入院検査や手術にも対応し、必要に応じて緊急手術も行っています。内視鏡手術を得意としており、前立腺肥大症に対する光選択的前立腺レーザー蒸散術(PVP)や尿路結石に対するレーザーを用いた結石砕石術など、先進的な手術にも対応しています。
治療方針
患者さん一人ひとりに最適な治療を行うことをモットーにしています。また、内視鏡や腹腔鏡、特殊な機器などを用いたものをはじめとする幅広い検査や治療に対応していますが、当院で提供できない治療が最適だと考えられる場合は速やかに大学病院へ紹介するなど、すべての選択肢から最適と思われる提案を行っています。その際には、メリットとデメリットを丁寧に説明することを心がけています。
得意分野
基本的に泌尿器科疾患のすべてに対応しています。特に、内視鏡手術を得意としていますが、腹腔鏡手術や開腹手術も経験豊富な泌尿器科を専門とする医師が対応しています。また、前立腺肥大症に対する光選択的前立腺レーザー蒸散術(PVP)や結石砕石術など、特殊機材が必要な手術にも対応しています。前立腺がんの針生検では、MRIや先進の超音波診断装置を用いることで生検本数を減らしながらも的確な診断を行えるよう取り組んでいます。
対象疾患・検査・治療方法
Ⅰ.悪性疾患
前立腺がん
当院は、3.0テスラのMRIを2台備え、針生検前にMRIを撮影し高精細画像を取得しています。これにより生検本数を減らすことができ、経直腸・経会陰と、2つのアプローチから、ガンの検出率を高める事が出来ます。生検は、2泊3日で行い、脊椎麻酔を用いることで、検査時の疼痛がないと患者さんから好評を得ています。
2017年の前立腺針生検による癌検出率は62%でした。PSA値が高い症例を対象にしているわけではなく、この検出率の高さは、PSA・ 触診所見 ・3テスラMRIによる検査前評価が有効なことと、生検時に使用しているリアルタイムバイプレーンエコー(前立腺の横断面と縦断面を同時にモニターに表示することができ、狙った部位を確実に穿刺することが可能)によるところが大きいと考えます。
診断確定後は、病期分類を行い、患者さまごとに最適な治療法を選択します。ここでもまたMRIは、癌の広がりをより正確に診断するために役立ちます。
膀胱がん
目で見える血尿が一度でもあれば、受診して下さい。肉眼的血尿で見つかることの多い疾患です。しかし、検診でみつかることもあるので、ご注意を。
早期であれば、経尿道的内視鏡手術(TURis-Bt)で治療が可能です。
しかし術後の再発率は高く、膀胱内再発は50%といわれています。内視鏡手術を5回以上施行しても、お元気な方もいますが、時に再発を繰り返しながら病期が進行することもあるので、再発率を減らすことに注力しており、手術直後に膀胱内に抗がん剤を注入するなどの取り組みを行っています。
また、手術で得た検体の顕微鏡検査結果によっては、外来で定期的に膀胱内にお薬(抗がん剤・BCG)を入れる治療を行っています。
*BCG(ウシの結核菌生ワクチン)
再発が生じた場合には繰り返しTURis-Btを行います。しかし癌が進行し、筋層まで浸潤している場合はTURis-Btでの完治は難しく、膀胱全摘・尿路変更術、化学療法、放射線療法などの治療を追加しなければなりません。
腎がん
小さな腫瘍に対しては経腰式腎部分切除術
腎臓は後腹膜臓器です。この方法は腰のやや後ろ側に皮切をおき、腹腔内に入ることなく手術することが可能です。腫瘍部のみを切除することによって腎の正常部位を温存し、一般的な片側の腎臓を丸ごと摘出する手術と比べ腎機能の低下を防ぐことができます。
中等度の腫瘍に対しては腹腔鏡下根治的腎摘出術
従来の開腹手術のように大きな皮膚切開をせず、1-2cm程度の小切開を3-5個開け、腹腔内に炭酸ガスを注入し、内視鏡下に細い手術器械を用いて行う手術です。
<腹腔鏡手術の利点と欠点>
腹腔鏡手術は開放手術に比べ傷の大きさが小さいので術後の痛みが軽減されます。またカメラで拡大した視野で精密な手術を行うことができます。しかし手を直接おなかの中に入れることができないため、開放手術に比べ手術操作が制限され、手術時間は開放手術より長くなります。ごくまれに大出血をすることがありますが、出血量は腹腔鏡手術のほうが少なくなります。
大きな腫瘍に対しては経腹式根治的腎摘出術
径が10cm以上といった大きな腫瘍では、根治を目指し開腹術を行います。創は大きくなりますが腎周囲を含めてがっちりとした手術を行うことが可能になります。
精巣腫がん
精巣が大きく硬くなる病気です。初期で受診すれば高位精巣摘除術で根治できます。顕微鏡検査の結果で再発予防のために化学療法を行うことがあります。転移がある場合にも、化学療法や後腹膜リンパ節郭清が必要になります。 好発年齢は20歳後半~30歳代で、挙児希望の方には化学療法を行う前に、精子保存を提案しています。(0~4歳 と高齢者にもピークがあります。)
Ⅱ.良性疾患
前立腺肥大症(BPH)
前立腺は、膀胱の出口に隣接して尿道を取り囲んでいる臓器です。前立腺が大きくなって、尿道を圧迫したために起こる病気です。肥大した部分を腺腫(せんしゅ)といいますが、40歳ぐらいから大きくなり始め、50歳以降に、以下の症状が出始めます。
主な症状
頻尿・尿勢低下・残尿感・尿意切迫
症状が悪化すると血尿や尿閉、尿路感染症を引き起こしたり、腎後性腎不全になることもあります。
まずは、薬物療法を行いますが、症状改善効果に乏しいときには、IPSS(国際前立腺症状スコア)、UFM(尿流量測定)、膀胱鏡検査による前立腺部尿道の閉塞の有無、前立腺体積などから、手術を検討します。
当院で施行しているのは、以下の3法です。どの方法も尿道からカメラを入れる方法で、おなかを切るものではありません。
治療法
生食下経尿道的前立腺切除術(TURis-P)
これは、古くからおこなわれ、BPHに対する手術のゴールドスタンダードです。麻酔法は全身麻酔、または硬膜外麻酔です。
手術体位は砕石位。
尿道口より直径約8mmの切除鏡を挿入し、先についたループ状の電気メスで、前立腺の肥大した腺腫をカンナで削るように切除していきます。手術時間が短いのが特徴です。出血部は電気メスで焼いてよく止血し、切除片は体外に洗いだして手術を終了します。
光選択的前立腺レーザー蒸散術(PVP)
全身麻酔、または腰椎麻酔で行います。
尿道口より直径約7mmと細めの内視鏡を挿入します。緑色のレーザーで、前立腺の肥大した腺腫を蒸散させながら、表面を凝固していきます。出血がほとんどないことが特徴です。
当院では最新のレーザー発生装置を用いて治療をしています。これにより手術時間は以前よりも短縮しました。入院期間が短いこと、アスピリンなどの抗血小板薬を内服中の方でも、休薬が不可能な方では内服下に手術をすることが可能というメリットがあります。
最新機械でPVPを施行できる施設数は、日本全国でも、50(2024.3現在)と限られております。
経尿道的前立腺核出術(TUEB)
スパチュラという剥離用の突起が付いたループ状電気メスで、被膜から腺腫を剥離していくものです。前立腺をミカンに例えると、皮と実の間に入り、実をくりぬいていくような手術です。くりぬいた腺腫は、あとで砕いて、膀胱内から摘出します。大きな前立腺に対する手術でも出血量が少なめなのが特徴です。
症例ごとに、どの手術法を行うのがBestか考えて治療をしております。
その他の排尿障害(神経因性膀胱、過活動膀胱、間質性膀胱炎など)
主に、お薬を飲むことによって、症状の改善を図ります。 間質性膀胱炎に対しては、麻酔下に膀胱に水を入れてふくらませる、膀胱水圧拡張術を行います。
尿路結石(腎結石、尿管結石、膀胱結石)
結石のほとんどは腎臓でつくられ、尿管・膀胱に流れ落ちます。結石が尿管の途中でひっかかると尿流を妨げるため、腰背部や下腹部の激しい痛み・血尿などを起こすことがあります。
発作は夏期と台風の時期に起きることが多く、激しい疼痛・水腎症の存在・発熱がある場合などは緊急処置・手術を要することもありますが、多くの場合は薬だけで痛みのコントロールが可能です。
治療法
大きさが5mm以下の尿路結石
飲水・運動などで自然排石が期待でき、排石促進薬や痛みどめを使用しながら経過観察することが可能です。
10mmを超えるような結石
自然排石が困難と判断した場合や、経過をみていても、しばしば激痛が生じたり、なかなか下降しないような場合には手術を勧めています。
当院では、レーザーを用いた経尿道的尿路結石砕石術(TUL)という内視鏡手術を行っています。
先端径が3mm以下の内視鏡を尿道口から膀胱を経由して尿管の中まで挿入します。結石を直視しながら、その大きさや硬さによってレーザー出力を調節し、粘膜の損傷が最小限になるようにして、結石を細かく割ります。すべて破砕した後、やや大きめのかけらはバスケット鉗子で取りのぞきます。
また上部尿管、腎臓内の結石にも、屈曲することができる内視鏡(軟性尿管鏡)を用いたf-TULという術式で対応しています。
尿路感染症(腎盂腎炎、膀胱炎、前立腺炎、精巣上体炎、ムンプス精巣炎など)
男性更年期障害(LOH症候群)
認定施設
- 日本泌尿器科学会泌尿器科専門医教育施設
医師紹介
名前 | 加藤 伸樹 |
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役職 | 泌尿器科 部長 |
専門分野 | 前立腺がん 尿路悪性腫瘍 排尿障害(前立腺肥大症、過活動膀胱) |
所属学会 | 日本泌尿器科学会 日本泌尿器内視鏡学会(代議員) |
資格 | 日本泌尿器科学会泌尿器科指導医・専門医 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医 |