当院の取り組み
【泌尿器科】腎結石(尿路結石)とは
腎結石(尿路結石)とは
尿中のカルシウム成分(シュウ酸カルシウムとリン酸カルシウム)などが結晶となり、これが集まって出来たものです。
腎臓で出来た結石は、腎盂→尿管→膀胱と下降しながら、疼痛・血尿・発熱といった症状を起こします。
結石の存在部位と性差
上部尿路結石(腎結石、尿管結石) 96%
下部尿路結石(膀胱結石、尿道結石) 4%
男:女 = 2.4:1
腎臓結石を含む結石は、男性は7名に1名、 女性は15名に1名が、一生に一度は罹患するといわれる比較的、メジャーな疾患です。
結石罹患率は、上昇傾向にあります。これは
1 食生活や生活様式の欧米化
2 人口構成の高齢化
と関係がありそうです。
肥満度と、結石の原因となる尿中のカルシウム量、尿酸量、シュウ酸量に相関が認められています。また結石患者さんにおいても、肥満者に高血圧症、糖尿病、脂質異常性といった生活習慣病が多く見られます。
尿路結石の症状
健康診断で見つかる腎臓結石の多くは無症状です。腎臓で出来た小さな石灰化が腎盂という尿の通り道に出て、これが細い尿管に落ち、尿の通り道をふさぐことによって、下腹部や大腿部に激しい痛みを起こします。疼痛時には目で見てわかる血尿を伴うことが多いです。またしばしば、吐き気、嘔吐を伴います。結石が尿管内を下降するのに従って、だんだん腰背部から側腹部、鼠経部と痛みの部位も下降します。うまく膀胱まで到達した結石の多くは尿道を通り、自然に尿と一緒に排出されます。
尿路結石の診断
尿路結石の症状がある場合は、泌尿器科で診療を受けます。まず、超音波検査で水腎症の有無を見ます。状態に応じて、検尿による尿検査、KUB(腹部レントゲン)、CTの検査を追加します。
発熱を伴う場合は結石性腎盂腎炎を疑い、採血、尿培養検査を行います。
尿路結石の治療法は、大きく分けて以下の3つがあります。
- 内服による自然排石の促進と疼痛の緩和
- 体外衝撃波による破砕(ESWL)
- 経尿道的尿路結石破砕術(TUL)
泌尿器科を受診して、結石が小さいと判断されれば自然排石の促進剤と鎮痛剤による治療のみ行い経過を観察しますが、自然排石が難しい大きさであれば破砕手術を併せて行います。
①内服治療は10mm以下の結石が対象です。
②・10mm以上の尿管結石
・症状発現後1ヶ月以内に自然排石を認めない場合
・複数結石 感染結石 高度肥満
・単腎 腎機能障害 両側尿管閉塞
・出血傾向を有する
といった場合には、腎機能障害や感染を回避する目的で積極的治療の対象となります。
当院では尿管鏡という径3mm以下の細いカメラを用いたTULを得意としています。これはカメラを尿道から挿入し、尿管内を結石まで進め、内視鏡モニターとレントゲンモニターで確認しながら、レーザーで結石を細かく砕く方法で割り、砕石後の結石のかけらを鉗子で取り除く方法です。腎臓結石の一部の症例には、自在に屈曲可能な軟性尿管鏡を用いた破砕術(f-TUL)を行っています。
2019年は9例にf-TULを施行し、合併症を低減させつつ平均入院日数は5.7日としました。
症例提示 硬性尿管鏡によるTUL
①レントゲンで下部尿管の結石を確認。尿管鏡を挿入して、緑色のレーザーを照射
②粉々に砕けた状態
③大きめ(2mm以上)の破砕片をバスケット鉗子で摘出
④破砕片除去後、レントゲンでは確認出来なくなる。パウダー状になった結石の多くは排尿時に自然に排出される。
腎臓結石の原因から知る罹患と再発の予防
腎臓結石は、一度罹患すると再発しやすい病気といわれています。そのため、腎臓結石になる原因を知り、予防することが大切です。
腎臓結石が起こる要因にはさまざまなものがあり、体質や生活習慣によっても異なります。主な原因の一つに、シュウ酸の摂取過多があります。そのためシュウ酸カルシウム結石の場合、腎臓結石の再発を予防するためにシュウ酸を多く含むホウレンソウ・タケノコ・コーヒー・紅茶・緑茶・チョコレートなどを控えるように指示をすることもあります。
上記以外の要因として、痛風を引き起こす尿酸やアミノ酸の一種であるシスチン、尿路が細菌感染を起こしたときに出来やすいリン酸マグネシウムアンモニウムなどがあります。動物性タンパク質やプリン体の取り過ぎに注意し、痛風にならないよう気をつけることや意識的に水分を摂取することが予防に有用なケースもあります。肥満の人はそうでない人に比べて結石が出来やすいといわれているため、生活習慣の見直しや食事療法も予防につながります。
腎臓結石の原因疾患としては、原発性副甲状腺機能亢進症があります。原発性副甲状腺機能亢進症では、副甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、血液中のカルシウム濃度が異常に高くなります。カルシウムの分泌は血中から尿中へも移行し、その結果としてカルシウムを多く含む結石が出来やすくなるのです。
腎臓結石が心配な方は、普段からの予防とともにお早めの泌尿器科の受診をおすすめします。