当院の取り組み

【外科】胆石症(胆嚢内結石症)について

2020/11/20

胆石症(胆嚢内結石症)について

胆嚢と胆石とは?

胆嚢とは、肝臓で作られた胆汁(脂肪を分解する消化液)を一時的に貯留しておく袋です。
胆汁は(食事摂取の刺激による)胆嚢の収縮により、胆汁が胆管を通って十二指腸へ排出され、腸内で食物を分解します。
胆石(胆嚢結石)は、胆汁(脂肪を分解する消化液)中のコレステロール、ビリルビン、胆汁酸などの成分バランスが崩れ、過剰となった成分が堆積して固まったものです。

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胆石の症状は?
  • 無症状(胆石ができても無症状の場合があります)
  • 胆石発作・急性胆嚢炎:
    上腹部痛、背部痛、右肩の痛み、吐き気、発熱、食後(脂っこい食事や食べ過ぎた後)に、みぞおちから右脇腹あたりの痛みが出現することが多く、胃痛と区別が難しい場合があります。
  •  
  • 慢性胆嚢炎:食後の上腹部痛や違和感

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胆石による影響
  • 胆嚢炎を起こす危険性
    胆石が胆汁の流出を妨げると、胆汁を排出しようと胆嚢の収縮が強くなり、痛みが生じます。また胆汁内で細菌が増殖すると胆嚢炎を発症します
  • 胆嚢がん発症の可能性
    胆石により長期間胆嚢粘膜が慢性的な刺激が持続すると、癌が発生する可能性があります。
  • 総胆管結石・胆管炎の可能性
    胆嚢内の結石が胆管へ落下し、胆管出口を閉塞すると胆管内で細菌増殖に伴う強い炎症が生じます。
胆石以外の主な胆嚢疾患
  • 胆のうポリープ
  • 胆嚢腺筋症
  • 胆嚢がん

胆嚢疾患の検査

胆嚢疾患を診断するための検査
  • 腹部超音波検査
    胆石や胆のうポリープ、胆嚢腫瘍などの確認
  • 腹部CT(造影)検査
    胆石や胆嚢腫瘍などの確認、胆嚢周囲の血管や臓器の位置確認
  • MRI (MRCP)
    総胆管結石の有無確認(胆石が胆管へ落下している可能性があるため)
    胆嚢と胆管の位置関係の確認

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手術を行う場合に行う検査
  • 上部・下部消化管内視鏡検査(胃カメラ・大腸カメラ)
    半年以内に胃カメラを受けていない方
    3年以上大腸カメラを受けていない方
    胆石の症状と胃疾患の症状が類似しており、胃潰瘍や胃がんなどが無いかの確認目的
  • 全身麻酔にリスクがないかを確認する検査
    血液検査、心電図、呼吸機能検査、レントゲン

※上記検査で異常を認めた場合は追加で検査を行う場合があります。

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胆石症の治療

内服治療

胆石が泥~砂程度の大きさであれば、薬剤で溶解する可能性があります。
はっきり石と認識できる大きさでは溶解する可能性はほとんどありません。

手術(胆嚢摘出術)
  • 腹腔鏡下胆嚢摘出術:胆石、胆嚢炎、胆嚢腺筋症など
  • 開腹胆嚢摘出術:胆嚢腫瘍(胆嚢ポリープで癌の可能性があるもの)

但し、以下のような患者さんでは高度な癒着(ゆちゃく)を伴う可能性が高く、腹腔鏡手術が難しい場合がありますが、当院では可能な限り腹腔鏡手術での治療を行っておりますので、安心してご相談ください。

  • 高度な炎症を伴った胆嚢炎(急性胆嚢炎)や腹膜炎後
  • 腹部(特に胃・十二指腸)の手術後

腹腔鏡下胆嚢摘出手術について

腹腔鏡手術とは?

腹腔とは胃、肝臓、胆嚢、小腸、大腸などの臓器が存在する腹部の大きな空間です。腹腔鏡手術は腹腔内を観察する内視鏡を入れて行う手術です。
腹腔鏡手術の利点は、手術による傷が開腹手術に比べて小さく、術後の痛みが少ないため、入院期間が少なく、早期に職場復帰が可能となります。
腸の運動の回復が早いため、手術翌日から食事を摂取できます。
傷あとが目立ち難く、女性では美容上の利点もあります。

腹腔鏡下胆嚢摘出術

手術は全身麻酔で行います。
おへそに開けた小さな穴から、二酸化炭素ガスを腹腔内へ注入して手術操作の空間を作り、腹腔鏡を使っておなかの中をテレビモニターに映し出します。
数か所のさらに小さい穴を開けて、電気メスなどの手術器具を入れ、胆嚢を切り取ります。切り取った胆嚢はおへそに開けた穴から取り出します。
胆嚢と胆管の交通部分はチタン製の小さなクリップで塞ぎます。クリップは体内に残りますが、金属アレルギー等がなければ体に害になることはありません。MRI検査を受けることも可能です。

当院の腹腔鏡治療の特徴は、おなかに開ける穴を少なくし(Reduced port surgery)、傷が少なく、体への負担が少ない手術を行うことを目標としております。
腹腔鏡下胆嚢摘出術では痛みの軽減や美容上の利点が期待できる単孔式腹腔鏡手術も行っております(単孔式手術が可能かどうかは手術前の検査結果次第となります)。

<手術方法による傷の違い>

1.腹腔鏡下胆のう摘出術
(一般的手術創)(単項式)

2.開腹胆嚢摘出術

入院経過と手術後の社会復帰など

手術前日:入院、夕食までは食事摂取可能
手術当日:禁食、水分摂取は手術3時間程度前まで可能
術後1日目:朝より水分摂取開始、昼より食事開始、鎮痛剤服用開始
術後2日目:シャワー可能、以降退院可能

仕事復帰:重労働を除けば、傷の痛みが落ち着いていれば仕事復帰は可能です。
平均的には術後約1週間程度で仕事復帰をされることが多いです。

胆嚢摘出による影響

胆嚢の役割は脂肪を分解する消化液である胆汁を貯蔵し、食後に一度に胆汁排出を増加させます。胆汁自体は肝臓で作られており、胆嚢摘出後も胆汁産生に大きな影響はありませんが、胆嚢摘出後は食後の胆汁排泄増加が減少するため、10%程度の方で脂肪分解低下による下痢症状がでる場合があります。下痢は2~3か月以内に改善します。